主な疾患

白内障

 白内障は耳慣れた病気ですが、加齢により水晶体が白く濁ってしまう病気です。

それに加えて糖尿病などの体の病気に併発する白内障、目の病気に続発する白内障、また外傷による白内障など様々な場合があります。白内障の症状は視界がかすんだり、光がまぶしかったり、全体的にみえにくくなるなどの症状が出てきます。水晶体が濁ってしまうと、光を十分に通さないため視力が低下してしまいますが、徐々に濁りが出現するためご自身では気づきにくい病気でもあります。まれに白内障を放置しておくと急性の緑内障などの合併症が起こることもあります。少しでも異常を感じたら早めの受診をお願いします。見え方が何か変わったなと思ったら眼科検診をお勧めします。

白内障の治療

 日常生活に困らない程度の白内障治療の基本は点眼です。ただし、点眼はあくまでも進行の抑制を目的にしています。濁った水晶体を透明な状態に戻すことはできないので、根本的な治療は手術です。 白内障の手術は、濁った水晶体を取り除き、透明な人工の眼内レンズを挿入する手術です。現在は超音波によって水晶体を細かく破砕して吸引する、超音波乳化吸引手術が主流です。当院ではわずか2.2~2.5mmの極小切開創で手術を行います。創口が小さく、縫合する必要はありません。術後の感染症などのリスクを軽減し患者様への負担を少なくいたします。また、目の状態などで多少の個人差はありますが、手術時間はおおよそ5~10分ととても短く、麻酔方法も点眼麻酔や前房内麻酔などの局所麻酔により、痛みはほとんどありません。以前に比べて現在では患者様の不安や負担が大幅に軽減されてきました。翌日から普段とほぼ変わらない生活を送ることができます。

緑内障

 緑内障は、失明の危険性がある怖い病気と知っている人が多いかもしれません。実際のところ、緑内障は日本の失明原因の第一位で、40歳以上の日本人では20人に1人以上は緑内障があるといわれています。 目はその形を保ち、良く見える状態にするために一定の「硬さ」が必要です。その「硬さ」を眼圧といいます。この眼圧は、眼球の中の房水という液体が循環することで行われていますが、なんらかの要因が作用し眼圧が通常より高い状態になることがあります。緑内障は眼圧が高い状態が続き、眼球の後ろにある視神経が傷つき、光を感じにくくなる疾患のことを言います。視神経は、網膜で感じた光を電気信号に変え映像を脳に伝える役目があり、その一部が欠損すると視野の一部が欠けて見えなくなる視野欠損や視野が狭くなる視野狭窄が起こります。緑内障で傷んだ視神経は元にもどすことはできませんので、緑内障は早期発見、早期治療が第一となります。 緑内障は自覚しづらい病気であり、日本では100人に4人の割合で眼圧が正常なのに視野がかけてしまう「正常眼圧緑内障」の患者様がいるため、眼圧測定だけでは緑内障の疾患をすべて見つけることができません。 眼底検査などの視神経乳頭の陥凹を確認し、おおよその緑内障を発見することができますので、40歳を過ぎたら眼科で緑内障の検査を定期的に受けることをお勧めします。

緑内障の治療

 緑内障は早期発見、早期治療によりその進行を抑えることができます。 治療方法としては、薬物療法・レーザー治療・手術などがありますが、すべての緑内障の患者様に対し同じ治療効果があるのではなく、緑内障の種類や状態などの病気の正確な診断が非常に重要になってきます。

小児眼科

 小児が大人と同じような視力に成長するのが、だいたい6歳頃と言われています。赤ちゃんの頃はぼんやりとしか見えていません。視力は徐々に発達していき、目で見たものを脳で認識できるようになります。すなわち、子供の視力は生まれた後に外界からの適切な視覚刺激を受けることによって発達します。両目でものを見る能力(両眼視)そしてものを立体的見る能力(立体視)は生後4~6か月で急速に発達し、その後1歳半までに両眼視ができないと発達しないと言われています。幼いお子さまは、自分で「目が悪い・見にくい」とは言ってくれません。その為、小学校、就学時検診で視力が出ないにはじめて気づき、受診される方も少なくありません。早い時期に治療を受けられれば視機能の発達を促していくことが可能ですが、学童期を過ぎてから治療を行っても大きく改善させることは難しいこともあります。お子様に見にくそうな仕草などがあり、親御様が少しでも気になればお早めにご相談下さい。

色覚異常

 色覚とは色を識別する感覚のことです。

「色」は光の三原色の赤、青、緑の三つの光の組み合わせで作られています。色を感じる視細胞(錐体)も3種類あり、赤色に敏感な視細胞、青色に敏感な視細胞、緑色に敏感な視細胞があります。色覚異常とは、この視細胞のうちのどれかの機能に異常があり、色が識別しにくくなる状態です。
先天性の色覚異常は日本人男性の20人に1人、日本人女性の500人に一人といわれており、決してまれな疾患ではなくありふれた存在で、また色覚異常が悪化することもありません。先天性の色覚異常の場合は、治療によって改善することはありません。

先天性の色覚異常は自覚しにくく、検査によって自分自身がどのような色覚の異常を持っているかを知ることが大切です。
 

見づらい色、区別がつきづらい色は各個人で異なります。

色覚検査表やパネルD-15という色覚検査によって、色覚異常や程度の有無や、日常生活で色の識別に問題がないかどうかを調べることができます。

 

有効な治療法は残念ながらありませんが、多くの場合、日常生活に困ることはありません。色のバリアフリーといって、学校や社会でみんなが見やすい色環境について見直しが行われています。

職場の選択には、パイロット・自衛官・警察官などで制限を受ける場合があります。
眼科を受診し、検査を受けることで区別がつきづらい色の傾向を自身で知っておくことが大切です。

まぶたの病気

眼瞼下垂

 眼瞼下垂は、まぶたを挙げる筋肉がうまく働かず、目が思いどおりに開かない状態です。眼瞼下垂症の原因は、先天性や加齢性、神経麻痺性、コンタクトレンズの長期装用、内眼手術後、外傷など様々です。眼瞼下垂では視界が狭く感じたり、おでこの筋肉を使いまぶたを挙げようとするため、おでこのシワが多くなったり、頭痛や眼精疲労の原因となったりします。眼瞼下垂の治療により、外見だけでなく頭痛や眼精疲労などの症状が改善される場合もあり、患者様のQOL(=Quality of life 生活の質)向上の期待もできます。

眼瞼内反症

 まぶたが内側に巻き込まれ、まつげや皮膚が眼球に触れ傷つけてしまう状態をいいます。うまれつきや加齢性の場合があります。

眼瞼外反症

 まぶたが外側にめくれしまい、目を閉じているつもりでも白目がみえてしまっている状態をいいます。まぶたが閉じにくくなるため眼が乾燥しやすく角膜に傷がついてゴロゴロします。

加齢黄斑変性症

 加齢黄斑疾患とは、黄斑部という網膜の中心部に異常を来たす病気です。黄斑部は視野の中心であり、ものをよく見ているところで、網膜の中でも最も鋭敏なところです。網膜の下にある脈絡膜から発生する新生血管の有無で「滲出型」と「萎縮型」に分類されます。新生血管は非常に弱く破れやすいため出血を起こしたり、血液の成分がもれたりして急激な視力低下の原因となります。現在、日本の失明原因の4位に挙げられ、今後の超高齢化社会ではより一層、患者数が増加することが予想されます。

加齢黄斑変性症の治療

 加齢黄斑変性は、網膜の下の脈絡膜に新生血管が生じます。この脈絡膜新生血管の発症や進行を抑制する抗VEGF中和抗体を目に注射する最新の治療法です。使用可能な抗VEGF薬はいくつかの種類があり、病状により使い分けを行っております。治療時間は5分程度です。日帰りでの注射治療を行っています。しかし、このような最新の治療をもってしても病気の進行を止めることが出来ない方もおられます。少しでもものが見にくいなと感じられましたら、眼科検診をお勧めします。

糖尿病網膜症

 糖尿病網膜症とは、糖尿病が原因で目の奥の網膜の血流が悪くなり、出血が起こる病気です。初期症状はほとんどなく、かなり進行するまで自覚症状がない場合があります。また適切な治療が行われないと失明する可能性のある病気です。 糖尿病の患者様は、内科での血糖コントロールを行い、また定期的な眼科通院も重要になります。

糖尿病網膜症は、大きく三段階に分類されます。

・単純糖尿病網膜症

初期の糖尿病網膜症です。血糖コントロールを行えば網膜症は進行せず、失明には至らない状態です。ただ、自覚症状がないため、眼科での定期検診は必ず受けるようにしましょう。

・前増殖糖尿病網膜症

単純糖尿病網膜症より進行した状態です。 血流が悪くなってしまい、この段階でも自覚症状はほとんどなく、放置すると増殖糖尿病網膜症へと進行します。

・増殖糖尿病網膜症

進行した糖尿病網膜症で重症な段階です。
新生血管が発生し、この血管の壁が破れると硝子体出血となり視力がわるくなってしまいます。出血が生じますと、黒いものが見えるなどの飛蚊症と呼ばれる症状を生じ、出血量が多いと急な視力低下となります。
また、増殖組織の膜が生じますと、これが網膜を引っ張り、網膜剥離を生じることがあります。
この段階の治療には、手術がひつようになります。しかし、手術がうまくいっても視力の回復が得られないこともあります。

糖尿病の治療
  1. 血糖値のコントロール
  2. 抗VEGF薬
  3. レーザー治療
  4. 硝子体手術

網膜前膜

 網膜の前に膜が張って、その膜により黄斑部にしわが生じ、見えにくくなってしまう病気です。発生のメカニズムとしては、まず黄斑部の上にある硝子体が剥離し、このとき剥離した硝子体皮質の一部が黄斑部上に取り残されてしまうことがあります。その膜がやがて収縮し始め黄斑部に影響与え、ものがゆがんで見えたりします。この病気は、黄斑円孔と同じく硝子体の収縮が関係して起きるため、高齢者に多く、女性に起きやすい病気です。その他、何らかの眼炎症が原因となることもしばしばあります。

黄斑円孔

 網膜の中心部の黄斑に穴があいてしまう病気です。硝子体の変化のために網膜が引っ張られ、「穴」ができてしまう病気です。直径1ミリメートルにも満たないとても小さな穴ですが、ものを見るうえで最も大事な黄斑部にできるため、視力に大きな影響が現れます。この病気は網膜前膜と同様に硝子体の収縮が関係して起きるため、後部硝子体剥離が生じる60代をピークにみられ、近視の人や女性に多い傾向があります。

網膜剥離

 目の奥の網膜という神経の膜が剥がれてしまい、視野障害と視力障害を引き起こす病気です。治療せずに放置すればしだいに見えなくなり、失明に至ってしまう怖い病気です。網膜に穴(裂孔)が生じ、その穴から液化した硝子体が網膜下に入り込 み、網膜がはがれ網膜剥離になります。 糸くずや虫のようなものが見える、いわゆる飛蚊症(ひぶんしょう)が、網膜剥離の初期症状です。飛蚊症の多くは加齢によって生じる問題のないものがほとんどです。しかし、飛蚊症の数が急に多くなるものや、大きな影のようなものが見えるようになった場合は、網膜剥離が疑われ、注意が必要です。
また、キラキラと光が見えるように感じる光視症(こうししょう)も、網膜剥離の前段階として特徴的な症状です。
進行してくると、カーテンや幕がかかっているように見えるなど、視野の欠けを自覚します。

網膜剥離の治療

 網膜にできた穴(裂孔)に対してはレーザー治療を行います。網膜裂孔にレーザー照射行い、はがれないように網膜を焼き付ける治療を行います。すでに網膜が大きく剥がれてしまっている場合は手術が必要になります。術後、視力回復することも多いですが、歪み等の症状が残ることがしばしばあります。